検査の結果を待つ日。大事な手術の日。自分ではもう、何もできることがない日。

がんばりようがないからこそ、不安だけがふくらんでいく——そんな日を、あなたはどう迎えていますか。

今日は、「妊娠できる確率は1%以下」と言われていた私が、採卵という大きな節目の日に見つけた、心の整え方のお話です。

不安なとき、人は「いい印」を探している

子どもを授かるために病院へ通っていたころ。
ある日の受付番号が「123」でした。

「いい並びだなぁ」と、写真まで撮って浮かれていた私。
それからというもの、時計を見ても、ふとした場面でも、この数字をよく見かける気がして、勝手に「いい傾向かも」と心の中で決めていました。

冷静に考えれば、数字が現実を変えるわけではありません。

でも、不安なとき、人は小さな「いい印」を拾って、自分を励まそうとするのだと思います。
それは弱さではなく、心が自分を支えるために働かせている、ささやかな工夫。

「こんなことで喜んで」と笑わずに、その日を乗り切る杖として、使ってあげていいのです。

大事に扱われると、心がほどける

採卵の当日。
専用の部屋に案内されると、ミネラルウォーターとお菓子が用意されていました。

「セレブ〜」と、ひとりで小さく笑った私。

「今日の採卵はエリさんだけです」と言われ、本当に他の部屋は空いていて、自分のためだけに整えられた時間に、じんわりとありがたさを感じました。

大事に扱われている、と感じられるだけで、心はほどけていくものです。
あれほど怖かった麻酔への緊張も、いつのまにか和らいでいました。

「3つ数えている間に意識はなくなりますよ」

うそん。ほんまに? と思っているうちに、3を言うか言わないかで記憶が途切れ、目が覚めたときにはすべて終わっていました。心配していた痛みも、ありませんでした。

人の手と、命の神秘

採卵できた卵子は、3つ。

ただ、精子の数が思ったより少ないことが分かり、相談の上で「顕微受精」という方法を選ぶことになりました。
元気な精子をひとつ選んで、管の中で卵子と出会わせる方法です。

数えきれない精子の中から、どの子を選ぶのか。
それを見極めるのは、培養師さんという専門家の目と手です。

一方で、自然な妊娠では、どの精子を受け入れるかは卵子の側が選んでいる、とも言われています。
そう考えると、いまこの世に生まれてきた命は、ひとつ残らず、途方もない選択をくぐり抜けてきた奇跡なのだと思えてきます。

自分にできることを終えたら、あとは委ねる

採卵の日までに、私にできる準備はやり尽くしました。
そこから先は、専門家の手と、命そのものの力に委ねるしかありません。

「委ねるしかない」と腹を決めたとき、不思議と心は軽くなりました。

不安の多くは、「自分が何とかしなければ」と握りしめているところから生まれます。
できることを終えたら、握っていた手を、そっと開く。

結果がどちらに転んでも、道がそこで終わるわけではありません。
委ねて待つ時間さえも自分の味方にしながら、次の一歩を選び直せばいい——命の現場で、私はそう教わりました。