「人にやさしくしても、損をするだけかも」。ふと、そんな気持ちになったことはありませんか。報われない親切を続けるのは、たしかにしんどいものです。けれど彩石屋には、「優しさは、忘れたころに巡って返ってくる」と教えてくれた出来事があります。今日は、その小さな実話をお話しさせてください。

店で起きた、支え合いの話

何年も前、彩石屋のスタッフのひとりに赤ちゃんができたときのことです。つわりが重く、立っているのもやっとの時期がありました。

そのあいだ、もうひとりのスタッフがひとりで店を守りながら、奥で休む彼女に冷房の風が直接当たらないよう、手作りの風よけをこしらえてくれたそうです。転ばないようにと、足元をそっと気にかけて歩いてくれたことも。

お客様もまた、自分のことのように喜び、見守ってくださいました。彼女が産休に入る日まで穏やかに過ごせたのは、まわりの支えがあったからこそでした。

「やっておくと、返ってくるんだなあ」

それから数年。今度は、あのとき支える側だったスタッフに赤ちゃんができました。

重い荷物を当たり前のように持ってもらい、びっくりした彼女に「あのとき、あなたがしてくれたことですよ」と伝えると、返ってきたのはこんな言葉でした。

「いろいろやっておくと、こうやって返ってくるんだなあ」

本人は、自分がしてあげたことを、すっかり忘れていたのです。

忘れるくらいの親切が、いちばん強い

見返りを期待した親切は、返ってこないと苦しくなります。
でも、したことを忘れてしまうくらい自然な親切は、相手の中に静かに残り続けます。

そして自分が弱ったとき、思いがけない形で戻ってくる。
「損得で動けない自分は要領が悪い」なんて、責めなくていいのです。

受け取ることも、優しさのうち

もうひとつ大切なのは、助けてもらう側になったとき、素直に受け取ることです。

「申し訳ないから」と遠慮して断り続けると、相手の優しさは行き場をなくしてしまいます。

受け取って、ありがとうを伝えて、いつか別の誰かに渡す。
優しさは、そうやって人から人へ巡っていきます。

まとめ——巡る優しさの中で

人生には、自分の力だけではどうにもならない時期が、誰にでもあります。
そういうときこそ、これまであなたが渡してきた優しさが、帰ってくる番です。

だから、ひとりで抱えこまないでください。
支えたり支えられたりしながら進める道は、思っているよりずっとたくさん、あなたの前に伸びています。