人と会ったあと、どっと疲れてしまう。
相手の機嫌や悩みを、まるで自分のことのように引き受けてしまう。
もしあなたがそうなら、今日のお話は、あなたのためのものかもしれません。年の瀬の彩石屋に来てくださった、あるお客様のお話です。

「人の気持ちを受けやすいんです」

年末は、その年の総集編のように、たくさんの願いやお悩みがお店に届けられます。
その中で、とても印象に残っているお客様がいらっしゃいました。

「人の気持ちを受けやすいんです」

実はこのご相談、お店でうかがうお悩みの中でも、いちばん多い部類に入ります。

その方は、これ以上受け取らないようにと、ご自分から心を閉ざしているように見えました。
表情も硬く、「人と会わなくていい年末年始が、いちばん幸せなんです」とまで仰います。

「あなたは、すごく優しいんですね」

お話をうかがって、わたしはそうお伝えしました。
ご本人は「え?」という顔をされます。そんな気は全くない、と。

でも、本当に優しい人は、自分の行いが優しさだとは気づいていません。
頼まれてもいないのに「何とかしてあげたい」と思ってしまう。それは無意識の、その人の根っこにある性質です。

そして、その性質ゆえに傷ついてしまう方が、確かにいらっしゃるのです。

優しい人が疲れていく仕組み

人は苦しいとき、無意識に「受け止めてくれる人」を探します。

優しい人は、相手の重たい気持ちを、スポンジのように吸い取ってしまいます。
相手は軽くなりますが、吸い取ったものは、出してあげないかぎり自分の中に溜まっていく。

これが、優しい人ほど身体が重くなり、人に会うのがつらくなっていく流れです。
あなたが弱いからでは、決してありません。

近ごろはHSPという言葉も知られてきました。小さな変化も見逃さない、いわば体内の名医のような細やかな感受性のこと。
感じる力が強いことは欠点ではなく、扱い方を知れば、あなたを支える力になります。

心の中でとなえる、ひと言

そんな方にお伝えしている、簡単な方法があります。
誰かの重たい気持ちが流れ込んできそうになったら、心の中でこう言ってみてください。

「私には、何もできません」

冷たい言葉に聞こえるでしょうか。
でもこれは、相手を見捨てる言葉ではありません。相手の荷物まで背負い込まない、という自分との境界線です。
あなたが請け負わなくていいものを、そっとお返しするための合言葉です。

お守りとしての水晶

このお客様が最後に選ばれたのは、ぴかぴかの水晶でした。

大事そうに手元につけて、「今年の最後に、こんなお守りに出会えてうれしいです」と、深々とお辞儀をして帰られました。

水晶にふれるたび、あの合言葉を思い出す。
お守りとしての石には、そんな「思い出すための合図」という役割があります。

まとめ——優しさに、境界線を

優しさは、自分を削って差し出すものではありません。
境界線の内側から、渡せる分だけ渡せばいいものです。

頑張る人が、頑張れる環境で生きていけますように。
心を閉ざさなくても歩いていける道は、これから先、いくらでも見つかっていきます。