「これ、誰かに頼めたら楽なのに」と思いながら、結局ひとりで抱えてしまう。
頼んだら迷惑かもしれない。断られたら気まずい。そう考えて、口をつぐんでしまうこと、ありませんか。
今日は、人に頼るのが得意ではなかった私が、「助けてください」と口に出してみたら、思いがけない縁が動き出した——そんな体験談です。
大嫌いな注射の前で、立ちすくむ
数年前、私は子どもを授かるために病院へ通っていました。
その過程で必要になったのが、ホルモンを補うための注射、そして卵を育てるための誘発剤の注射。
これが、大の注射嫌いの私には大問題でした。自分で自分に打つなんて、とても無理。
そこで腹をくくって、「誰か、打ってくれる人はいませんか」と、まわりに声をかけて探すことにしたのです。
幸い、店のスタッフに元ナースの方がいて、お願いすることができました。
ただ、どうしても日が合わない日があって、また困っていました。
「あれ? 元ナースじゃなかったでしたっけ」
そんなある日のこと。店に、常連のお客様がふらりといらっしゃいました。
その日の朝に思い立って、当日予約で来てくださった方でした。
スタッフがふと思い出して、言いました。
「あれ? ○○さん、元ナースじゃなかったでしたっけ?」
「はい。私、元ナースですが(笑)」
何のことか分からずに答えるその方が、拝みたくなるくらい、ありがたく見えました。
「私に、注射を打ってください!」
我ながら、とんでもないお願いです。
それでも「いいですよ〜」と快く引き受けてくださって、さらに驚いたことに、その方のお住まいは、私が引っ越したばかりの家の目の前。
「このために引っ越したの?」と笑ってしまうほどの偶然でした。
そしてのちに、その方はご縁あって、店のスタッフとして一緒に働いてくれることになるのです。
縁は、頼った人の前で動き出す
偶然といえば、偶然かもしれません。
でも、もしあのとき私が「迷惑かな」と黙っていたら、この縁は生まれていませんでした。
「助けてください」と口に出していたから、目の前に現れた偶然を、つかまえることができたのだと思うのです。
頼ることは、弱さではありません。
「あなたを信頼しています」という、相手へのメッセージです。
頼られた側は、案外うれしいもの。
あのお客様の「いいですよ〜」の笑顔が、それを教えてくれました。
「3つも!」——比べなければ、喜べる
もうひとつ、この時期に教わったことがあります。
誘発剤を使って育った私の卵子は、3つでした。
病院では「かなり少ない方です」と言われました。
でも、「普通」を知らない私の心に浮かんだのは、「3つも?!」という気持ち。
自分の卵子を目にする機会なんて、ふつうに暮らしていたらありません。人の身体の神秘に、ただ感動していました。
多いか少ないかは、誰かの基準と比べたときに生まれるもの。
比べる物差しを手放せば、目の前にあるものを、そのまま喜ぶことができます。
ひとりで抱えている荷物を、ひとつだけ
あなたがいま、ひとりで抱えているものは何でしょうか。
全部を預ける必要はありません。
いちばん重いものをひとつだけ、「手伝ってもらえませんか」と口に出してみてください。
その一言から、思いもよらない縁が動き出すことがあります。
道はひとつではなく、あなたが声を出すたびに、新しい道が増えていくのですから。