2011-03-11。東日本大震災の日、彩石屋の店内にはスタッフがいました。
あの日のことは、今も忘れられません。けれど今日お話ししたいのは、震災の怖さではなく、そのあとに店先で教わった「人の優しさ」のことです。

薄暗い店を、開け続けた日々

幸い、あの大きな揺れの中でも、店の天然石はひとつも落ちず、割れることもありませんでした。
この話をするとびっくりされるのですが、わたしたちは、日頃のお客様の気持ちや心遣いに守られていたのかもしれない、と感じています。

震災のあとは、計画停電の日々。彩石屋は電気やガスを大きく使う店ではないので、なんとか店を開けることができました。

電気の通らない薄暗い店内で、暖房もない寒さの中、かじかんだ手でブレスレットを組み、外の光で天然石の色を確かめる。
そんな手探りの毎日でも、店を開け続けることに意味がある気がしていました。

「みんな大丈夫だった?」と来てくれた人たち

そんな中、お客様が次々と様子を見に来てくださったのです。
「みんな大丈夫だった?」「石は割れてない?」と。店が開いているかどうかも分からないのに、わざわざ足を運んで。

ご自身も大変なはずなのに、人のことを心配できる。
あのときの嬉しさとあたたかさは、十年以上たった今も、昨日のことのように思い出せます。

震災は悲しい記憶です。でも、お客様のあたたかさは、それ以上に深く、いつまでも記憶に残っています。

大変なときは、人間関係の正直な鏡

あの経験から、学んだことがあります。
いちばん大変なときに、人の優しさを知る。そして残念ながら、優しくない一面を知ってしまうこともある——ということです。

非常時には、誰にも取り繕う余裕がありません。だからこそ、その人の素の在り方が表れます。
大変な時期に人間関係の手放しが起こるのは、つらいけれど、自然なことでもあります。離れていくご縁を、無理に追いかけなくていいのです。

そのぶん、残ったご縁は本物です。あなたがどん底のときにそばにいてくれた人を、どうか大切にしてください。

まとめ——優しさは、選べる

そして、これがいちばんお伝えしたいことです。
人の素が出るとき、どんな自分でいるかは、自分で選べます。

余裕のないときこそ、ひとこと「大丈夫?」と声をかけられる人でありたい。
あの日、寒い店先に届いた優しさは、わたしたちの原点のひとつになりました。あなたの優しさもきっと、誰かの記憶にあたたかく残り続けます。

どんなに大変な日が来ても、人はそうやって支え合いながら、また歩き出せるのですから。