「特技は何ですか」と聞かれて、言葉に詰まったことはありませんか。
趣味ならある。でも「特技」と言い切るほどのものは、何もない気がする——。
そんなふうに落ち込む夜に、思い出してほしい話があります。
長年お客様として通ってくださり、ご縁がつながってスタッフになった、ある女性の話です。
たまたまの出会いが、30年続いた
彼女が楽器を始めたきっかけは、ほんの偶然でした。
子どものころ、姉が楽器を弾く姿を見て「私もやりたいな」と思っていたところに、たまたま先輩から「練習に来ないか」と誘われた。
その後、欲しいと言ったらたまたま親が買ってくれて、「楽器があるんだったら続けようか」と。
大きな決意も、運命の確信もありません。
それでも気づけば30年以上。人生の半分以上を、その楽器とともに過ごしてきたそうです。
「うまく吹けないから、続けてるんだと思う」
インタビューのなかで、いちばん心に残った言葉がこれでした。
「何年吹いてもうまく吹けないから、だから多分続けてるんだと思う」
上達しきってしまわないから、いつまでも新しい発見がある。
ふと「このまま続けて意味があるのかな」とよぎる日もあるけれど、「吹いてるのは楽しいから、まぁいいのか」と戻ってくる。
続ける理由は、立派な目標でなくていい。
楽しいから続く。続くから、人生に残る。その順番でいいのだと、彼女の話は教えてくれます。
「特技」と言えるまでに、30年かかった
彼女は最近になってようやく、「特技は楽器です」と言えるようになったそうです。
ずっと吹いてきたのに、長いあいだ「特技だとは思っていなかった」。
30年以上続けてきた事実を振り返って、やっと「言ってもいいのかな」と思えた、と笑っていました。
特技とは、宣言して手に入れるものではなく、続けた日々があとから名前をくれるもの。
いま「何もない」と感じているあなたの毎日にも、数え忘れている積み重ねがきっとあります。
続けてきたものは、縁も連れてくる
彼女にとってその楽器は、人生の大切な出会いまで連れてきてくれました。
学生時代の音楽仲間との縁が、のちの結婚へつながったのだそうです。
「すごい直感だけで生きてきたなって思う。あんまり悩むことはなくて、パッと考えて動いてきた」とも話してくれました。
目の前の「好き」を手放さずにいた人のところに、縁は自然と集まってくるのかもしれません。
あなたの「続いているもの」を数えてみる
仕事でも、料理でも、誰かを気づかうことでも。
うまくできないまま、それでもやめずに続いているものがあれば、それはもう、あなたの軸が育っている証拠です。
軸は探しに行くものではなく、足元で静かに太くなっていくもの。
今日も続けたという一日を、どうか小さく数えてあげてください。その先の道筋は、いくつでも開いていきます。