「私なんて、何もできないから」

新しいことに誘われたとき、反射的にそう答えていませんか。
今日は、そんなふうに言っていたある方が、見違えるように変わっていったお話です。

「縫い物、できますか?」から始まった

お店に長く通ってくださっていた、あるお客様。お子さんの学校のPTAが一段落して、「そろそろ働こうかな」と思っていた時期でした。

そのころ姉妹店の酵素風呂が開店準備の真っ最中で、スタッフがふと聞いたのです。
「縫い物、できますか?」

「簡単なものなら」と軽く引き受けたその方の家に、後日届いたのは、想像をはるかに超える布のロール。お客様用の酵素着を、まとめて縫ってほしいという頼みでした。

「なんじゃこの量は!と思いました」と、今では笑い話です。
型紙もなく、見本だけを渡されて。それでも「やると言った手前」と向き合い、最終的に150枚を縫い上げました。

お金のためから、楽しいへ

その方はやがて、お店のスタッフになりました。

以前の仕事では、日曜の夜になると「明日から仕事か」と憂うつになり、金曜には「やっと休める」とほっとする毎日だったそうです。

それが今は、「行ってきまーす」と出かけていく。
「お金はもちろん必要だけど、それだけじゃない。空間が好き、一緒に働く人が好き。働くのが楽しいんです」

仕事の中身が変わったというより、働く理由が変わったのです。
お金のためだけに耐える時間から、自分の役割を感じられる時間へ。

キャパは筋トレと同じ

受付の電話を取るだけでびくびくしていたその方は、気づけば仕事の幅をぐんと広げていました。

このとき、お伝えした言葉があります。

キャパは、筋トレと同じ。鍛えれば広がるし、鍛えなければ広がらない。

最初から持ち上がる重さしか持たなければ、力は今のままです。
「ちょっと無理かも」の少し先を任されて、なんとかやり切る。その繰り返しだけが、「できる」の範囲を広げてくれます。

あの大量の縫い物も、あとから振り返れば「あの時だからできた」と本人が言います。締め切りと「やるしかない」状況が、力を引き出したのです。

役割は、縁の中で見つかる

人生には、自分が楽しむという軸と、誰かの中でどんな役割を持つかという軸の、ふたつがあると思っています。

その方は言いました。
「今の自分の環境が、すごく幸せなんだなって思うんです」

役割は、机の上で考えても見つかりません。声をかけられて、引き受けて、やってみた先で出会うもの。つまり、縁の中でしか見つからないのです。

「私なんて」と思っているあなたへ。
できるかどうかは、今のキャパで判断しなくて大丈夫。声がかかったら、それはキャパを広げる練習の合図かもしれません。人の「できる」は、いくつになっても広がっていきます。