人生の節目を振り返ると、「あのとき、あの人のあの一言があったから」という場面が、誰にでもあるのではないでしょうか。

今日は、私自身が子どもを望むかどうか迷っていた頃の、ちょっと不思議な出会いのお話をさせてください。

デパートの前で、声をかけられた

仕事で都内に出ていた、ある日のこと。
すこし早く終わったので、デパートでお惣菜でも買って帰ろうかと考えていたら、背中の方から声がしました。

振り返ると、真っ白なスーツにハット姿の、おしゃれなおじいさん。
新潟からいらしていて、昔お世話になったお店へ挨拶に行きたいのに、場所がわからないとのことでした。

調べてみると、道は単純でも、すこし距離があります。
言葉で説明しても、たどり着ける気がしませんでした。

「一緒に行きましょうか」

普段なら、まっすぐ帰るところです。
でもこの日は、なぜかそうしたほうがいい気がしたのです。

ラーメン屋さんで聞いた、まさかの一言

目的のお店はもう閉店作業中で、会いたかった方には会えずじまい。
残念がるおじいさんと駅へ向かううちに、一緒に夕飯を食べることになり、ラーメン屋さんへ。

聞けば、なんと88歳。
背すじの伸びたお元気な姿の秘訣を尋ねると、「黒ニンニクを毎日4つ食べている」と教えてくれました。

そして、そのおじいさんが私に言ったのです。

「子を産め」

結婚して17年。仕事中心の私を理解して、どちらの両親も子どもの話を真剣にしてきたことはありませんでした。
正面からそう言ったのは、このおじいさんが初めてでした。

同じ言葉は、二度やってくる

実はその頃、夫からも「黒ニンニクを作りなさい」と言われていました。
だからおじいさんの口から黒ニンニクの話が出たとき、「ここでも言われた!」と驚いたのです。

しかもおじいさんは、「旦那に毎日食べさせろ」と言います。
夫は私に作れと言い、おじいさんは夫に食べさせろと言う。

後日、子どもを授かりたいと心を決めたとき、私はおじいさんの言葉どおり、夫に黒ニンニクを毎日食べてもらうことにしました。
夫はまさか、自分の口に入ってくるとは思っていなかったでしょう。

受け取る準備ができたとき、言葉は届く

子どもがいてもいなくても、幸せはある。私はずっとそう思って生きてきました。
それでもあの頃、心の中にはうっすらと、子どものことが芽生え始めていました。

自分ではまだ言葉にできずにいた望みを、見ず知らずのおじいさんが、説教のような勢いで押し出してくれた。
記念に撮ったはずの写真がどうしても見つからなくて、いまでも幻のような出会いだったと思っています。

まとめ——あなたへの言葉も、もう届いているかもしれない

思わぬ人の一言が妙に心に残るとき、それはあなたの中にすでにあった気持ちが、返事をしているのかもしれません。

受け取るかどうかを決めるのは、いつだって自分です。
心に確かめて「そうしたい」と思えたなら、素直に受け取ってみる。そこから始まる道も、ちゃんとあります。