「人に甘えるのが、苦手で」

店頭でお話をうかがっていると、この言葉によく出会います。
家族のため、仕事のため、いつも自分はあとまわし。頼ることが下手で、気づけばひとりで抱えてしまう。

もしあなたもそうなら、今日は店でうかがった、あるお客様の「練習」のお話をさせてください。

甘えられないのは、性格ではなく癖

そのお客様は、男の子ふたりを育てるお母さん。
「一人でなんとかしなきゃ」と抱え込んでしまう自分の癖を、ご本人がいちばんよく分かっていました。

そこで始めたのが、目の前の子どもに甘える練習です。

ちょっとした買い物を頼む。手伝ってもらったら「ありがとう、助かる」と言葉で返す。
たったそれだけのことを、春からこつこつ続けたそうです。

小さなお願いが、一輪の薔薇になった

変化は、思いがけない形でやってきました。

お兄ちゃんが、お手伝いのたびに受け取る小さなお小遣いをこつこつ貯めて、お母さんの誕生日に真っ赤な薔薇を一輪、贈ってくれたのです。
「去年までの私なら『そんなことにお金を使わなくていいよ』と言っていたと思う」と、お客様は笑っていました。

でもその日は、「ありがとう。お母さん、嬉しい」と受け取れた。

頼ることは、相手から何かを奪うことではありません。
「あなたを頼りにしている」という、信頼の伝え方でもあるのだと、この薔薇のお話は教えてくれます。

自分にも「一番いいほう」を選ぶ

お客様の練習には、続きがありました。自分のための買い物で、妥協しないことです。

コンビニでデザートを選ぶとき、本当はこっちが食べたいのに、手頃なほうで「まあいっか」としてしまう。
子どもには良いほうを選ぶのに、自分にはいつも二番目。心当たりはありませんか。

「私は、これを選んでいい」。

小さな買い物でそう決める練習が、「自分は大切にされていい」という静かな感覚——自分軸を、足元から育てていきます。

ゆるむと、巡りはじめる

「頑張らなきゃ」で固まっているとき、わたしたちは身構えています。
両手がふさがっていて、差し出された優しさを受け取れません。

肩の力が抜けてくると、これまで取りこぼしていたものが、すっと受け取れるようになる。

愛情は、正面からだけ届くものではないようです。横から、後ろから、子どもの小さな手から。
受け取る側にゆとりができたとき、はじめて巡りはじめます。

まとめ——お母さんの前に、ひとりの「私」

先生としての私、妻としての私、お母さんとしての私。
役割の鎧を一枚ずつ脱いでいくと、最後には「私」がいるだけでいい——そう思える日が、きっと来ます。

甘えることは、弱さではありません。

今日、家族にひとつだけ、小さなお願いをしてみてください。
返ってきた「いいよ」を、遠慮せずに受け取るところから始まります。受け取れるようになったあなたの前に、道はいくらでも開けていきます。