あなたがいま、いちばん怖いと感じていることは何ですか。

転職、引っ越し、誰かに本音を伝えること。
「変わりたいのに、怖くて動けない」——そんな足踏みの正体について、今日はすこし考えてみたいと思います。

恐怖の正体は「傷つきたくない」という心

世の中が大きく揺れた年には、人間関係が壊れたり、逆に結び直されたりということが、たくさん起こりました。

人間関係が壊れる理由のひとつに、不安や恐怖があります。
不安が心の余裕を奪い、思いがけない言動をさせてしまう。切羽詰まった場面で見えた相手の姿に、悲しくなった方もいるかもしれません。

では、なぜわたしたちは不安になり、怖くなるのでしょう。
それは心のなかに、傷つきたくないという気持ちがあるからです。

先に「どうせだめだ」と恐怖を盾にしておけば、それが現実になったとき「ほら、やっぱり」と、傷つかずにすむ。
怯えなくていい場面でも怯えてしまうのは、そんな心のクセなのです。

親知らずと、逃げ出したくなった日

ここで、わたし自身の小さな体験をお話しさせてください。親知らずを抜きに行った日のことです。

診察台で、先生から説明を受けました。
「下の親知らずは神経が近いので、抜いたあと痺れたり腫れたりすることがあります。痺れが残る場合もあり、そのときは大学病院での対応になります」

——え、一生痺れたまま?

改めて言葉にされると、足がすくみました。
「たまにうずく親知らずと、ずっと残る痺れなら、うずくほうがましでは……」と、抜かずに帰る理由を頭が次々に並べはじめます。

でも、思い出したのです。夏に「年内に抜いてしまおう」と自分で決めたことを。
十数年わずらわしいと思っていたものに、けりをつけたかったこと。

震えそうになりながら「お願いします」と言いました。

結果は——5秒ほどで、すっと抜けました。
縫うこともなく、痛み止めも飲まず、腫れも痺れもなし。「あれ、もう終わり?」と拍子抜けするほどでした。

恐怖は、行動でしか変えられない

この体験で痛感したことがあります。

怖い怖いと考えているあいだは、恐怖は1ミリも小さくならないということです。
頭のなかの恐怖は、現実よりずっと大きくふくらみます。まだ起こっていない未来を想像して、勝手に育っていくからです。

恐怖を小さくできるのは、考えることではなく、動くことだけ。
そして最初の一歩に要る勇気は、恐怖の大小にかかわらず、誰にとっても同じ「えいやっ」のひと押しです。

その一歩の経験が積み重なるほど、恐怖はすこしずつ遠のいていきます。

恐怖を感じたら、変わる一歩手前

もうひとつ、お伝えしたいことがあります。

恐怖を感じるのは、あなたがいままさに変わろうとしているからです。
どうでもいいことに、人は怯えません。怖いのは、それがあなたにとって大事な変化だから。

  • - 怖い、と感じた
  • - それでも気になって、頭から離れない

この2つがそろったら、それは「変わる一歩手前」のサインだと、わたしは思っています。
だから、進んでいいのです。震えながらでかまいません。

まとめ——怖さは、味わって、置いていく

恐怖をなくしてから動こうとすると、一生動けません。
怖さは消すものではなく、変化の入り口で味わって、一歩踏み出すと同時に置いていくもの。

親知らずひとつでも、抜けたあとの景色はすこし違って見えました。
あなたの前にある恐怖の向こうにも、いまは見えない新しい景色がきっとあります。

怖いと感じたあなたは、もう変わりはじめています。
道はひとつではありません。震える一歩の先で、あなたの人生がまた彩られていきますように。