「始めたいことはあるんです。でも、きっかけがなくて」
そう言って、何か月もおなじ場所で足踏みしてしまうことはありませんか。
今日は、ご先祖さまたちが暮らしのなかで使ってきた「きっかけの作り方」のお話です。
きっかけは、待つものではなく決めるもの
きっかけというのは、不思議なものです。
待っているあいだは一向にやって来ないのに、「この日に始める」と決めたとたん、向こうから歩いてきます。
つまり、きっかけは天気のように降ってくるものではなく、自分で予定に書き込むものなのです。
とはいえ、その日付を白紙から決めるのは案外むずかしい。そこで頼りになるのが、暦です。
暦には「始める」ための日がある
たとえば天赦日(てんしゃび)。
一年にわずか5日か6日ほどしかない、暦の上ではとても貴重な日です。
この日に始めたことはうまく運ぶ、と昔から言われてきました。
大安と重なる年もあり、そんな日はカレンダー屋さんも太字にするほどの、縁起のよい日とされています。
ある年の秋、ちょうど天赦日と大安が重なった朝に、神社で七五三参りの親子を何組も見かけました。
晴れ着の小さな背中を見ながら、「節目」というものの力を、あらためて感じたのを覚えています。
七五三も「初めて」を祝う行事だった
七五三の起源とされる3つの儀式を、ご存じでしょうか。
- - 髪置(かみおき)の儀——3歳の子が髪を伸ばし始める
- - 袴着(はかまぎ)の儀——5歳の男の子が初めて袴をはく
- - 帯解(おびとき)の儀——7歳の女の子が初めて帯をしめる
どれも「始める」「初めてする」を祝うもの。
七五三とは、成長の節目に立ち会い、新しいスタートをみんなで喜ぶ行事だったのです。
昔の人は、こうして暮らしのあちこちに「始める日」を埋め込んでいました。
縁起のよい日は、言い訳を外す道具
「縁起なんて気にするほうですか?」と聞かれたら、わたしはこう答えます。
気にするというより、使うのだと。
新しい一歩の前には、お金がない、時間がない、まだ早い——言い訳がずらりと並びます。
そこに「今日は一年に数日の特別な日だから」という後押しがあると、言い訳の声がすこし小さくなる。
まったく新しい挑戦でなくても構いません。
躊躇していた連絡をひとつ、後回しにしていた調べものをひとつ。それで十分、立派なスタートです。
疲れている日は、労わるのが先
ひとつだけ、お願いがあります。
縁起のよい日でも、心や身体が疲れているときは、休むことを優先してください。
自分を労わることも、未来の一歩のための大切な準備です。
暦の節目は、これからも何度でもめぐってきます。今年を逃しても、来年がある。
あなたのカレンダーの先に、「始める日」の印がひとつ増えますように。