部屋の掃除はするのに、心の掃除をしたのはいつだったか思い出せない——。
毎日をこなすのに精いっぱいで、自分の内側を見つめる時間が後回しになっていませんか。
今日は、彩石屋の地元・府中のお祭りで心に残った、「鏡を磨く」という美しい習わしのお話です。

街の空気が変わる、くらやみ祭

彩石屋のある東京・府中では、ゴールデンウィークの時期になると、大國魂神社の「くらやみ祭」が始まります。

ある年の朝、店に向かう道で、提灯飾りを備え付けている人の姿を見かけました。着々と進むお祭りの準備に、一年のめぐりの早さを実感したのを覚えています。

お祭りが始まると、街の空気がうーんと変わるんです。
お囃子と太鼓の音、御神輿や山車の巡行。店の前の旧甲州街道を馬が駆ける「競馬式」という行事もあります。毎年この神事の数日間で、街がすっと清められていくように感じるのです。

鏡を磨いて、心も磨く

数ある神事のなかで、いちばん心に残っているのが「御鏡磨式」です。

御神輿に付ける鏡を、塩で磨いて清める儀式。鏡は古くから、自分自身と、その心をも映し出すものとされてきました。だから鏡を磨くことには、捧げ持つ人の心まで磨き清めるという意味が込められているのだそうです。

道具を整えることと、心を整えることが、ひとつながりになっている。
この考え方が、わたしはとても好きです。

心にも、決まった「手入れの日」を

鏡と同じで、心も放っておくと曇ります。曇った鏡では、いまの自分がよく見えません。

  • - 最近、ひとりで静かに振り返る時間をとりましたか
  • - もやもやを言葉にしないまま、ためこんでいませんか
  • - 「まあいいか」で流した違和感が、積もっていませんか

お祭りが毎年めぐってきて街を清めてくれるように、心の手入れにも「決まった節目」があると続けやすくなります。月の初め、季節の変わり目、地元のお祭りの日——きっかけは何でもかまいません。

石を休ませることも、同じ手入れ

彩石屋では、天然石を身につけっぱなしにせず、ときどき休ませて手入れすることを大切にしています。

やわらかい布でそっと拭いて、しばらく休ませてあげる。
鏡を磨く神事と同じで、手をかけているその時間そのものが、自分の心と静かに向き合う時間になります。石の手入れは、心の手入れの合図にちょうどいいのです。

まとめ——磨くたびに、映りがよくなる

心の手入れは、一度で終わるものではありません。曇っては磨き、磨いてはまた曇る。その繰り返しでいいのです。

鏡がきれいになるほど、いま自分が立っている場所と、そこから伸びる道がよく見えてきます。道は一本ではありません。磨くたびに、見える道は増えていきます。

今夜はまず、寝る前の5分だけ。今日の自分を、静かに映してみませんか。