「なんでだろう、急にあの人の顔が浮かんだ」

そんな経験はありませんか。
何年も会っていないのに、ふとした拍子に思い出す人。今日は、店主エリのもとにそんな連絡が届いた日のはなしです。

17年、お互いの仕事も知らないまま

エリには、不思議な付き合いの友人がいます。

東京に来て間もないころ、近所の中国茶のお店にふらりと立ち寄った際に、偶然出会った人。
以来17年ほど、要所要所で会う関係が続いています。

面白いのは、お互いに会社をやっていることは知っているのに、その中身にはほとんどふれないこと。
何をしている人なのかよく知らないまま、それでも会えば話が止まらない。そんな間柄です。

「壊れたドライヤーの前で、あなたの顔が浮かんだの」

その友人から先週、「会いたい」と連絡が来ました。

会ってみると、開口一番こう言うのです。
「髪を乾かしていたら、急にドライヤーが壊れてね。そのとき、あなたの顔がぱっと浮かんで、会わなきゃと思ったの」

理屈で言えば、ただの偶然でしょう。
でも、その偶然をきっかけに「会いたい」と動いてくれたことが、何よりうれしい。
目的があるようでないような再会なのに、おしゃべりが止まりませんでした。

久しぶりの会話は、自分の現在地を映す鏡

不思議だったのは、彼女が投げかけてくる話題が、エリがちょうどそのとき考えていたことばかりだったことです。

これからやってみたいこと。ためらっていること。
口に出して話すうちに、「私はいま、自分のいまの器に収まる範囲だけで未来を考えていたな」と気づかされました。

彼女の何気ない一言が、自分ひとりでは見えなかった枠の外側を見せてくれたのです。

久しぶりに会う人との会話には、こういう力があります。
毎日会う人には話さないことを話すから、自分の現在地が言葉になって、目の前に並ぶのです。

「動けるうちに、動いた方がいいよ」

さらにその帰り道、ばったり会った顔なじみからも、ひとことだけ言われました。

「動けるうちに、動いた方がいいよ」

同じ日に、別々の人から、背中を押す言葉が重なる。
偶然といえば偶然です。けれど、重なった偶然に意味を与えるかどうかは、自分で決めていいのだと思います。

エリの答えは「はい、動きます」でした。

ふと浮かんだ顔は、合図かもしれない

もしあなたの頭に、ふと誰かの顔が浮かんだら。
理由を探す前に、短いひとことでいいので連絡してみてください。

久しぶりの再会は、懐かしさだけでなく、いまの自分の輪郭と、次の一歩を照らしてくれることがあります。
あなたの「会いたい」も、相手にとっての小さな贈り物になるはずです。