「やってみたいことがあるのに、怖くて足が止まってしまうんです」
お店でお話をうかがっていると、そんな声によく出会います。
頭では分かっているのに、胸の奥がすくんで動けない。今日はそんな日に思い出してほしい、真っ赤な夕陽と、ひとつの石のお話です。
臆病なのではなく、大切なものがあるだけ
一歩が出ないとき、わたしたちはつい自分を「臆病だ」と責めてしまいます。
でも、怖さを感じるのは、いまの暮らしや人とのつながりを大切にしている証拠でもあります。壊したくないものがあるから、慎重になる。それ自体は、少しも悪いことではありません。
本当にもったいないのは、怖さに気づかないふりをして、「やりたい」という気持ちまで一緒にしまい込んでしまうこと。
怖さはそのままでいいので、気持ちのほうだけは、しまわずに置いておきましょう。
スタッフの記憶に残る、真っ赤な夕陽
彩石屋のスタッフのひとりは、3〜4歳のころの唯一の記憶が「山の上から毎日眺めていた、真っ赤な夕陽の空」だと言います。
そのスタッフがいま楽しみにしているのが、「凪(なぎ)」の海。風がやみ、波が消えて、海面がしんと静まった状態を凪と呼びます。凪のときに夕陽が映った赤い海が、とてもすてきなのだそうです。
それを聞いた瞬間に、「いつか見に行こう」とひとつ楽しみが生まれました。
大きな決心でなくていいのです。小さな「いつか」を自分の中に置いてあげるだけで、心は前を向き始めます。
カーネリアン——夕陽の赤を宿す石
その真っ赤な夕陽を思い出させてくれるのが、カーネリアンという天然石です。
カルセドニーの仲間で、赤橙色のあたたかな色合い。古い時代から身を守るお守りとして大切にされてきた石で、ナポレオンが肌身離さず身につけていたことでも知られています。
臆病な気持ちをそっと払い、希望に向かう勇気の象徴とされてきました。8月の誕生石としても親しまれています。
意外なのは、燃えるような赤い色をしていながら、激しい怒りや混乱の中で平静を取り戻す手助けをしてくれる、とも言われていること。
熱と、静けさ。一日の終わりに夕陽の赤が心を鎮めてくれるのと、どこか似ています。
まとめ——怖いまま、小さく踏み出す
怖さが消えるのを待つ必要はありません。怖いまま、笑ってしまうほど小さな一歩でいいのです。
凪の海を「いつか見に行こう」と決めたスタッフのように、小さな楽しみをひとつ、心に置いてみてください。
うまくいかなければ、引き返したっていい。生きているかぎり、道は一本きりではなく、いくらでも枝分かれして続いていきます。
あなたの一歩に、夕陽の赤がそっと寄り添いますように。