「この石、まだつけてもいいのかな」
引き出しの奥にしまい込んだ昔のブレスレットを前に、そう迷ったことはありませんか。彩石屋のスタッフにも、同じ迷いを経験した者がいます。今日は、役目を終えた石を手放すまでの、その体験のお話です。
「紫を身につけるといい」のひと言から
きっかけは、「紫のものを身につけるといいですよ」というひと言でした。
そういえば以前は紫が好きで、服もよく紫を選んでいたのに、ある時から着られなくなっていた——。不思議なことに、その言葉をもらう少し前、なぜか紫の服を買っていたそうです。
そこでふと思い出したのが、昔身につけていた天然石のブレスレット。
しまい込んでいたものを、久しぶりに取り出してみました。
取り出した石は、くたびれていた
ところが手に取ってみると、その石はどこか疲れて、くたびれて見えたといいます。
当時のことを思い返すと、悩みを解消したい思いのすべてを、石に預けきっていました。
石は十分に寄り添ってくれた。そしてその役目は、悩みを乗り越えたときに、もう終わっていたのです。
天然石との付き合いには、こうした区切りがあります。
ひとつのことを乗り越えたら、その出来事と一緒に手放す。わかっていながらできていなかったことに、久しぶりの再会が気づかせてくれました。
手放すのは、忘れるためではない
スタッフは、その石を手放すと決めました。
寂しい決断に聞こえるかもしれません。でも本人は「思い出させてくれてありがとう、という気持ちです」と笑っていました。
振り返れば、恵まれていたのに、そこに目を向けられていない自分がいた。
嫌なことや不満を数えるのではなく、今あるものに「ありがたい」と思えること。その学びを石が運んでくれたなら、感謝とともに送り出すのがいちばんの礼儀なのかもしれません。
過去にではなく、今に生きるために手放す。
それは忘れることではなく、受け取ったものを胸に、次へ進むことです。
人生をつくってきたのは、あなたの選択
この体験が教えてくれるのは、石の話だけではありません。
わたしたちの毎日は、小さな選択の積み重ねでできています。何を持ち、何を手放すか。どこに目を向けるか。
気づきさえすれば、選び直すことはいつでもできます。
軌道修正に、遅すぎるということはありません。
紫の石、アメジスト
紫にちなんで、アメジストのお話も少しだけ。
アメジストは、高ぶる気持ちを静め、自分らしく振る舞う心の象徴とされてきた天然石です。
紫は、動の赤と静の青がひとつになった色。
心と身体のバランスを思い出させてくれる色として、古くから親しまれてきました。
まとめ——ありがとうと言えたら、手放しどき
役目を終えた石に気づいたら、それはあなたがひとつ乗り越えた証です。
「ありがとう」と心から言えたとき、その石はもう、十分に働き終えています。
手放した手は、空っぽではありません。次のものを受け取るために、あいたのです。
今のあなたに寄り添うものと、また新しく出会っていけますように。