「あの人はすごいのに、私には何もない」

職場やグループの中で、隣の人がまぶしく見えて落ち込んでしまう。そんなお話を、店頭でよくうかがいます。

今日は、彩石屋のスタッフが実際に通ってきた葛藤のお話をさせてください。

「取り柄がない」と思い込んでいたスタッフの話

かつて彩石屋に、未経験で入ってきたスタッフがいました。

まわりにいたのは、お客様を惹きつける店主と、石の知識が豊富な先輩。その間に立って、彼女は「私はどうやってここでやっていけばいいんだろう」と悩んだそうです。

頭の中にあるのは「自分には取り柄がない」ということばかり。2人をいいなあと見上げる日々だったといいます。

自信のなさは、声にあらわれていた

転機は、思いがけない一言でした。

接客中のある日、店主にぽつりと「声が小さいよ」と言われたのです。

指摘されて初めて、彼女は気づきました。声が小さくなっていたのは、自信がなかったから。

自信のなさは、自分では見えません。けれど声の大きさや姿勢という形で、ちゃんと外にあらわれているのです。

まず、できることを積み上げる

「それなら、勉強するしかない」

彼女はそこから学び始めました。先輩と同じ内容に加えて、自分だけの勉強もプラスして。すると少しずつ、「大丈夫」と思える場面が増えていったといいます。

自信は、待っていても降ってきません。小さくてもいいから、できたことを積み上げていく。遠回りに見えて、これがいちばんの近道です。

「あの人と私は、別の人間だ」と気づく

そして、もうひとつの転機が訪れます。

少し自信がついたころ、ふと「この人たちと私は、別なんだ」と思えた瞬間があったそうです。

それまでは「ああいう風になりたい」「ああなった方がいいのかな」ばかり。でも比べることをやめたら、問いが変わりました。

「あの人にあって私にないもの」ではなく、「私の武器は何だろう」へ。

彼女の場合、その武器は誰からも親しまれる人柄でした。本人がいちばん気づいていなかった持ち味です。

あなたの武器も、あなただけが見えていないのかもしれません。まわりの人が褒めてくれること、頼ってくれることの中に、ヒントが隠れています。

決めたことは、言葉にして人に言う

もうひとつ、この対談で語られていた大切なことがあります。

「自分でやると決めたことは、人に言う」。

叶わなかったら格好悪い、ではなくて。言葉にすると覚悟が決まり、覚えていてくれた誰かが、思いがけない形で力を貸してくれることがあるからです。

実際、店を始めてすぐのころに口にした夢を覚えていてくれた人とのご縁が、何年も経ってから形になったこともありました。言葉は、未来への小さな種まきです。

まとめ——比べる相手は、昨日の自分

隣の人がまぶしく見える時期は、誰にでもあります。

でもそれは、あなたが弱いからではありません。「ああなりたい」と思える人がそばにいる、めぐまれた時期でもあるのです。

比べて落ち込みそうになったら、問いを変えてみてください。「私の武器は何だろう」と。

あの人の道を歩けなくても、あなたの道がなくなるわけではありません。自分の武器を探しはじめたその日から、道はいくつでも拓けていきます。